2024年に読んで面白かった本5冊
2024 年に読んで面白かった本 5 冊
1. Where wizards stay up late / Katie Hafner, Matthew Lyon
https://www.amazon.co.jp/dp/0684832674
1957 年から 1989 年までのアメリカ合衆国を舞台に、インターネットの起源である最初のコンピュータ通信ネットワーク “ARPANET” の誕生から終焉までを描いたノンフィクション。
ARPANET は国防総省が資金提供した国家プロジェクトだが、20 分の立ち話で資金提供が決まったりリリース期限ギリギリまでバグを治してたりとスタートアップ的な勢いがあって面白かった。現代のインターネットを支える技術的基盤を作り上げた偉大なプロジェクトだったが、リリース当初の環境に最適化したことで後から続くネットワークとの競争に敗れひっそりと役目を終えていく姿が印象的だった。
2. トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー / ガブリエル・セヴィン, (訳) 池田真紀子
https://www.amazon.co.jp/dp/415210273X
幼い頃にゲームを通じて親友となった少女セイディと少年サムは成長して再会しゲームを共同開発、ビジネスは大成功するものの些細な行き違いからゲーム制作でも友情でも溝が深まっていき…という 2 人の人生の四半世紀を描いた小説。
主人公 2 人は恋愛関係になることはないがお互いがお互いの最大の理解者であり続け、人生の節目でセイディがサムを、サムがセイディを救う関係にある。人生の重要な部分を共有した人間同士の関係性の変わる部分と変わらない部分の対比が印象的で、数ヶ月かけて時間を置き少しずつ味わうように読んだ。
3. 1 兆円を盗んだ男 / マイケル・ルイス, (訳) 小林啓倫
https://www.amazon.co.jp/dp/4296119990
2022 年 11 月に破産した暗号資産取引所 FTX および資産運用会社アラメダ・リサーチの創業者サム・バンクマン・フリード氏と幹部たちを取材し、その盛衰と創業者の人物像を描いたノンフィクション。
150 億ドルを超える預かり資産の規模に比して事業や組織の運営が粗末すぎること、サムと周囲の人間たちが傾倒していた「効果的利他主義(EA: Effective Altruism)」の遠大な思想と現実の対比が印象的な作品だった。こういった巨額の金融不正事件には珍しく、金に踊らされた人間や私利私欲のもたらす歪みではなく理想主義な少数の人間がもたらした災害という点で興味深い。
4. 対馬の海に沈む / 窪田新之助
https://www.amazon.co.jp/dp/408781761X
2019 年に発覚した JA 対馬の資金不正流用事件を題材に、農協組織のインセンティブ構造を利用して 20 億円を超える巨額の資金を詐取した西山義治と彼を駆り立てた「共犯者たち」を描いたノンフィクション。
JA という巨大な組織で内部の人間が不正を繰り返す構造に着目し、西山がどのようにその構造を「利用し」その構造に「利用された」かを丁寧な取材で描き出している。西山を単なる横領犯と見做すのではなく不正を生み出した構造そのものを捉えようとしている著者や協力者の姿に共感しつつ、根本的な問題そのものは解決していないという意味で微妙な後味の作品だった。
5. バッタを倒すぜ アフリカで / 前野ウルド浩太郎
https://www.amazon.co.jp/dp/4334102905
西アフリカで大発生し深刻な農業被害をもたらす越境性害虫サバクトビバッタの研究に人生を捧げ、現在はその防除技術開発に従事する著者が自身の研究過程と成果をまとめた本。同著者の「バッタを倒しに アフリカへ」の続編であり、前作では(論文発表前のため)触れられなかった著者のメインの研究内容を取り上げている。
一人の駆け出し研究者がバッタの繁殖行動の謎に気づいて仮説を立て自分でそれを検証して論文として発表するまでの 13 年間の紆余曲折を描き、それがハイインパクト雑誌(PNAS)からの論文発表と著作のベストセラーという形で結実するまでを描いたアカデミックな闘いの記録だった。自分の好奇心に忠実に生きる人間の自己肯定感を高める本だと思った。